山のあなたになお遠く


前の夜にはどんなことを思うだろう?


突然、泣き出す人もいるだろう。 逃げ出そうとする人もいるだろう。


何もしゃべらず一人静かに過ごす人もいるかもしれない。


死ぬのが怖い?


当たり前ではないか。


70年前の日本に、確かに御馳走をお腹いっぱい食べてお酒を飲み明かした若者がいた。


彼らは神風特攻隊と呼ばれていた。


「天皇陛下万歳」と言っただろうか?


言ったかもしれない。


でもやっぱり「お母さん」と叫んだに違いない。


そして自分が好きだった人の名前を呼んだはずだ。


そんな夜を迎えて、その若者たちは眠りにつくことができたのだろうか?


翌朝、勇敢に手を振って飛行機に乗り込む。


現実に目を背けず突撃しなければならない。


幸せとは何だろう。


70年経った今、人は幸せになったのだろうか?


小さな子どもが母親に聞いていた。


「幸せってどこにあるの?」


「ずっと遠くの山の向こうよ」


「友だちと行ったよ。でもなんにもなかった」


「あんな高い山まで登れたの?すごいわね」


「だって、“幸せ”があるって言ったから」


「あの山のもっと向こうにあるのね。あなたがもっと大きくなったらきっと見つかるわ」

山のあなたの空遠く

幸い住むと人のいふ。

ああ、われひとと尋とめゆきて、

涙さしぐみ、かへりきぬ。

山のあなたになほ遠く

幸い住むと人のいふ。


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