医学部 最後のメール


嬉しかった2009年は、もう7年も前のこと。


医学部に長男が受かるとは思ってなかったから、その気持ちはひとしおだった。


しかし私立医学部の学費を払えるとは思えなかった。


「東工大ではだめかな? 医学部じゃなくても国立理系で東大の次にくる難関校だし」


と咄嗟に長男に聞いた自分がいたことを今でも覚えている。


国公立の理系なら学費は何も問題はない。 


しかし学費を払う親としては私立医学部は別格だった。


だから、子供の意志を考えず理工系に進めないだろうかと口をついたのだ。


しかし、本人の医者への思いは、頼もしいほど強かった。


そんな長男の顔を観て居たら、腹をくくるしかなかった。


妻は義父、義母にも相談してくれたことで学費工面が見えてきた。


もちろん奨学金も借りた。


とても自分の稼ぎだけでは医学部の学費工面は実現出来できるものではない。


この7年間の出来事は今思えばあっという間の出来事だった。


医学部の留年は子供より親の方がショックが大きい。


そんなことも経験した。


1年を指折り数えていた。


まだ2年生か、まだ4年生か。 あと何年かかるんだ。


そんなことを感じながら四季を7回やり過ごして今日を迎えた。


今日1月9日14時。


時計は動かない。


まだかまだかと何度もスマホを確認していた。


そんな時に27年度医学部卒業者が発表された。


14:05 長男からメールが来た。


「卒業したよ」


ただの五文字の素っ気ないメールだった。


それで十分。


この五文字ですべての気持ちが伝わって来た。


不格好に生きたこの7年が懐かしく思えるほど私は安堵した。


ただ医師国家試験は2月。


そう喜んでも居られない。


初詣では、今年もいい年になりますようになどとお願いするものではない。


どうぞ辛いことでも嫌な事でも構いません。


その全てを与えて下さい。


そしてその一つ一つを必ずやり遂げるから、どうぞ見守っていて下さい。


と心の中で反すうしてきた。


いいことがおこりますようになどとお願いなどしてどうするか。


よもや、災いがサルなどと、良いことばかりを願ってはならない。


この先、私はきっと、今と変わらず前を向いて生きているだろう。  


これから先も苦しみながらも頑張ってるに決まってる。


その姿を隠すことなく、落ち込んだ人たちにぶちまけてあげよう。


気の利いた言葉はあげれないかもしれない。


でもね、苦労して頑張ってる姿は勇気を与えられると信じている。


今、この瞬間を生きている姿がそこにあるだろう。


人は人によって癒される。


白黒にグレーがかった風景を鮮明なカラーにしてくれるように。


たかが五文字メール。


素っ気ないメール。


そんなメールで私の心が癒されたことは間違いない。


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